顔の麻痺のあと、食事中に涙が出るのはなぜ?|ワニの涙の仕組みとこれから
栃木県宇都宮市の美容鍼・鍼専門、東京で12年この道を歩み、2013年に開院したえん鍼灸院です。
このページは、顔面神経麻痺(ベル麻痺・ラムゼイ・ハント症候群など)のあと、食事のときに涙が出るようになった方と、そのご家族に向けて書いています。
はじめにお伝えしたいこと
食事中の涙は、仕組みが分かっている現象です。
ご本人の努力や生活のせいではありません。
発症から時間がたってからでも、顔のこわばりや動きに、よい変化がみられたという研究報告があります。
目次
食事中に涙が出るのは、なぜですか?
食事中の涙は、傷ついた顔の神経が伸び直す途中で、つばを出す指令の線の一部が、涙を出す指令の線の側へ迷い込んでつながったために起こる、と考えられています(参考文献3)。この現象は「ワニの涙」と呼ばれています。
専門的には、迷い込んで再びつながることを「迷入再生(めいにゅうさいせい)」、食事のときに涙が出ることを「味覚性流涙(みかくせいりゅうるい)」といいます。
見方を変えると、傷ついた神経が、もう一度伸びようと働いた跡でもあります。
顔の神経には、3つの線が一緒に通っています
顔の神経(顔面神経)の中には、役目の違う神経の線が束になって通っています。
顔を動かす線(まばたき・笑う・口を動かす)
つばを出す指令の線(顎の下と舌の下にある、つばを作る場所へ向かう)
涙を出す指令の線(目の外側の上にある、涙を作る場所へ向かう)
顔面神経麻痺では、この束全体が傷つきます。
食事中に涙が出るまでの経過
神経が傷つく
時間をかけて、神経の線が伸び直す
伸びる途中で、一部の線が行き先を間違えてつながる
食事でつばを出す指令が出ると、涙の側にも届いて涙が出る
なぜ、発症してしばらくたってから出てくるのですか?
傷ついた神経が伸び直すには、何か月もかかります。行き先の間違いは、線が伸びてつながったあとに表に出てきます。そのため、発症から数か月ほどたってから気づかれることが多いとされています。
麻痺が出たばかりのころの涙は、別のものです。まぶたが閉じにくく、涙が目にとどまらずあふれて起こります。
ウインクで口角が上がる動きにも、同じ仕組みが関わります
目を閉じると口の端が上がる、口を動かすと目が閉じる、といった動きは「病的共同運動(びょうてききょうどううんどう)」と呼ばれます。これも、神経が伸び直すときのつなぎ間違いが関わると考えられています。
時間がたってからでも、変化の報告があります
発症から9か月以上たった方を対象にした研究では、顔の練習を続けることで、こわばりや口の動きに、よい変化がみられたと報告されています。
麻痺の後遺症がある方に鍼を行った研究では、顔のこわばりや、日常生活での顔の困りごとに、よい変化がみられたと報告されています。
いったん別の行き先につながった神経の線を、鍼が元に戻せるのかどうかは、まだ分かっていません。一方で、顔のこわばりや動きは、施術とご自宅での練習で一緒に取り組んでいける部分です。
涙の様子を知ることが、最初の一歩です
涙の出方は、人によって違います。どんな食べ物で、食べ始めてどのくらいで、どちらの目に、どのくらい出るのかをメモしていただくと、ご自身の涙の傾向が見えてきます。
人前で食事をするときに気になったり、つらく感じたりするのは自然なことです。傾向が分かると、外での食事の場面も考えやすくなります。ご家族の方も、この仕組みを知っておくと、気持ちが少し楽になると思います。
当院での進め方
当院では、毎回お顔と首まわりの状態を確認しながら、その方に合わせて鍼の施術を組み立てます。
涙の様子も一緒に確認していきます。お顔や涙のことで気になることがあれば、当院にご相談ください。
ご予約は、次の3つからお選びいただけます。
ホットペッパービューティー(24時間予約可):https://beauty.hotpepper.jp/CSP/kr/reserve/?storeId=H000694572
お電話:028-688-0431
施術効果には個人差があります。
参考文献
Beurskens CH, Heymans PG. Otol Neurotol. 2003. PMID 12851564
Kwon HJ, et al. Trials. 2015. PMID 26037730
味覚性流涙の仕組み:StatPearls. PMID 30247828